個人スタッツページのRAPMタブの解説です。
RAPMとは
RAPM(Regularized Adjusted Plus-Minus)は、選手がコート上にいる間のチームの得失点差をベースに各選手の貢献度を測るスタッツで、単位は100ポゼッション毎のチームの得失点差に対する影響力です。
RAPMはオフェンスとディフェンスの2つに分解できます。
自チームの得点効率を高める「O-RAPM」も、相手チームの得点効率を抑える「D-RAPM」も、値が大きいほどポジティブな影響を与えているという意味です。
総合評価であるRAPMは O-RAPM + D-RAPM で算出されます。リーグ平均は0としているため、合計値がプラスであれば平均以上の貢献、マイナスであれば平均を下回る影響を与えていることを示します。
なお、後述するThree FactorsのRAPM(PPS・REB・TOV)は生の係数のまま表示しているため、符号の向きに注意が必要です。
算出方法
なぜ「調整」が必要なのか
ある選手が2点を決めたとき、その2点はその選手一人だけの手柄ではない場合がほとんどです。スクリーンプレーでディフェンスのズレを作ったり、いくつもパスがあったり、セカンドチャンスを作り出したリバウンド等の様々なプレーが得点という結果に結びついています。そのうちボックススコアが記録するのは、リバウンドやアシスト、そして最後の得点のところだけであり、スクリーンだったりアシストとして記録されていないパスはボックススコア上には残りません。
対してOn/Offデータやプラスマイナスは、ボックススコアに残らない部分も含めて結果として記録されます。ただ、On/Offデータは「誰と一緒に出ていたか」や相手にどんなラインナップが出ていたかを考慮していないので、他の選手に大きく左右されてしまいます。RAPMはボックススコアを一切見ず、各ポゼッションの結果(何点入ったか)のみを見ていきますが、誰と一緒に出ていて、相手に誰がいたかを考慮して調整することで、その選手個人の貢献度を推定します。RAPMの「A」(Adjusted=調整)はこの調整のことを指します。
なぜ「正則化」するのか
調整ばかりを徹底すると、「過学習」と言われる現象が起きて数値の予測精度が低くなってしまいます。 たとえばほとんど出ていない選手が、たまたまクオーター終わりのブザービーターの瞬間だけコートにいたとします。 計算は結果しか見ないので、その選手に大きなインパクトがあるように見えてしまいますが、実際にはこのような選手に対して自信をもって大きなインパクトがあるとは言えません。
このような事態を避けるために、RAPMはシグナルとノイズを分け、シグナルの部分だけを残そうとします。 具体的には、根拠となるデータが少ない選手ほど、評価を平均(0)の方向へ引き戻します。 数学ではリッジ回帰と呼ばれる手法で、名前の「R」(Regularized=正則化)はここから来ています。
この正則化のおかげで、ポジティブな値でもネガティブな値でも多くのミニッツをプレーしている選手だけが0から離れた値を持ち、反対に出場ポゼッションの少ない選手は0に近づきます。 なので数値を見る時にひとつ気を付けなければいけないのは、0に近い選手が出場時間が短いから0に近いのか、それともある程度出場があった上で0に近い値なのかというところです。
サンプルサイズについて
RAPMは1シーズン分のデータだけでは良い値が出にくい指標です。1シーズンのデータではラインナップのバリエーションが少なく、ノイズの大きいデータになってしまいます。たとえば、いつも同じタイミングで一緒にコートに入り、一緒にベンチに下がる2人がいると、その間チームのパフォーマンスが良かったとしても、どちらの手柄なのかを区別する材料がありません。 3シーズン、5シーズンとデータのサンプルを増やしていくと、移籍などによってラインナップの組み合わせも増え、良いデータになっていきます。 本サイトのRAPMのページでは1年、3年、5年の3種類のRAPMを用意しており、ページ上部から切り替えられるようになっています。
Three Factorsへの応用
RAPMの枠組みを応用し、貢献をシュート・リバウンド・ターンオーバーの3つの要素に分解したものも同じRAPMのページに載せています。
PPS(Shooting Impact)
1本のシュート(FGAまたはフリースロートリップ)を1行とし、そのシュートで挙がった得点を目的変数にします。テクニカルのフリースローは除外します。単位は1シュートあたりの得点です。
- O-PPS: プラスほど良い(自チームのシュート効率を上げる)
- D-PPS: プラスほど悪い(相手チームのシュート効率を上げてしまう)
- PPS(合計)= O-PPS − D-PPS
REB(Rebounding Impact)
リバウンドが発生した機会1回を1行とし、オフェンスリバウンドなら100、ディフェンスリバウンドなら0を目的変数にします。単位はOREB%、つまりオフェンスリバウンド獲得率です。
- O-REB: プラスほど良い(自チームのOREB%を上げる)
- D-REB: プラスほど悪い(相手チームのOREB%を上げてしまう)
- REB(合計)= O-REB − D-REB
TOV(Turnover Impact)
ポゼッション1本を1行とし、ターンオーバーで終わったなら100、そうでなければ0を目的変数にします。単位は100ポゼッションあたりのターンオーバー数です。
- O-TOV: プラスほど悪い(自チームのターンオーバーを増やす)
- D-TOV: プラスほど良い(相手チームのターンオーバーを増やす)
- TOV(合計)= D-TOV − O-TOV
このThree FactorsのRAPMはそれぞれ独立した計算で求められていて単位も違うので、すべて足してもRAPMとは一致しません。
注意点
- RAPMは選手の能力や才能を数値化した指標ではありません。 その選手がその起用法で出場した際に、試合に及ぼした影響を数値化したものです。チームや役割が変われば数字は大きく動きます。値が低い=能力がない、ではありません。
- RAPMは対象期間の全ポゼッションをまとめて計算するため、日付・対戦相手・ホーム/アウェイなどのフィルタはできません。
- 表示される出場時間(MIN)はガベージタイムを含みますが、各指標に用いられる数字はガベージタイムを除いた値です。